疫学研究の手法の1つであるコホート研究では、ある要因を持つ人と持たない人(例えば、喫煙者と非喫煙者)を 何年にも渡って観察し、 病気の発生(あるいは死亡)状況を調べます。

そして、ある要因を持つことは持たないことに比べ、その病気になりやすさを何倍くらい上げるかということを推計していきます。今までにそのようにしてわかってきた代表的な研究成果は、たばこを吸う人は吸わない人にくらべ肺がんになりやすいということです。

日本では、故平山雄博士により1960年代後半に6府県コホートといわれる大型のコホート研究が開始されました。 この研究によって、タバコを吸わない女性では、夫がたばこを吸う場合、夫がたばこを吸わない女性に比べて肺がんになりやすいことや、たばこが肺がんだけでなく他の多くの部位のがんの発生に関連していることが明らかになりました。

しかし、日本人の生活習慣(例えば、喫煙習慣、食習慣、運動習慣など)は最近、大きく変化してきているといわれています。 そのような状況の中、がんによる死亡は、数、率ともに年々増加していますので、有効な治療法を研究するだけでなく、日本人における適切ながん予防法を確立することが必要と考えられます。

そこで、文部科学省(当時文部省)の科学研究費の助成を受け、青木國雄名古屋大学教授(当時)を中心に、多施設が協力して、大規模なコホート研究が開始されました。1988年のことです。このコホート研究は、約12万人の一般の方々の協力を得て、最近の日本人の生活習慣ががんとどのように関連しているかを明らかにすることを目的としています。